大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(ネ)490号 判決

控訴人は右三容商事株式会社は法律上実在しない会社であり、従て同会社の代表者名義で右手形を振出した被控訴人は振出人としての責を負はなければならない、と主張し、被控訴人はこれを争うのでまずこの点につき検討する。思うに約束手形の振出人である会社の存否、延いて、その代表取締役として記名押印した者の代表権限の有無に争があるときは、会社の存在ないし代表権限の存することを主張する側においてこれを立証し、それによつて代表者個人としての手形上の責任を免れ得るものとすることが手形の円満流通を計る立場から相当と解される。されば、本件においても被控訴人において右会社の存在と被控訴人にその代表権限のあることを立証しない限り手形法第八条の法意に則り被控訴人は個人として本件手形上の責任を免れ得ないものといわなければならない。而して会社は本店の所在地において設立の登記をすることに因つて成立するものであること商法第五十七条の明規するところであるが、被控訴人を代表取締役とする三容商事株式会社なる法人の登記の存することはこれを認め得る何らの証拠もない。のみならず証拠によれば、本件手形の振出人の名称に附記された東京都中央区銀座東八丁目四番地を本店所在地とし、被控訴人を代表取締役とする三容商事株式会社なるものは管轄登記所である東京法務局日本橋出張所に登記されていないことが窺い得られ、また原審において被控訴人が「右会社の本店所在地である」と供述する東京都杉並区高円寺一丁目四十番地(控訴人の肩書住所地)を本店所在地とする右会社の登記も存しないことは被控訴人の自認するところである。

以上の次第で本件約束手形振出当時その振出人欄に記載された三容商事株式会社なるものの存在は法律上これを認めることができないから、右会社の取締役社長として本件手形を振出した被控訴人は前記手形法第八条の規定の趣旨により個人として本件約束手形振出人としての義務を負うものと解するのが相当である。

(谷本 堀田 野本)

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